研究の足跡(その2)

主な論文の内容を裏話とともに簡単に紹介しています。

第1部:学生(京大修士~博士)時代(2013~2016)
第2部:神戸大研究員時代(2017~2020)

~第2部~

交通空白地でのコ・ガバナンスの形成における課題(衛藤、2018)
自家用有償旅客運送(空白地有償)に取組む2事例から、ステークホルダー(地元住民、交通事業者、行政、NPOなど)間の利害調整・合意形成のプロセスを示しながら運営体制の構築に向けた課題と要点を明らかにした論文。

研究の裏話
過疎地交通に関する一連の研究における一報目。民間の研究費をいただくことができ、弾みがつきました。実際にバスが1日2本、飲んだら家に帰れないような地域に住んでみて、改めて移動の問題、足の問題が根深く、農村での暮らしにおいて根源的な課題であることを実感し、突き動かされるように進めてきた研究です。
調べるほどに制度的課題、既得権益、広域行政など、暮らしの足の確保を阻む要因は山積みかつ複雑に交絡していて、非常に根深い課題であることがわかります。

買物難民や医療難民など、個別の具現化した課題に移動販売やネットショッピング、遠隔医療などのしくみを考察するような対処療法的なアプローチももちろんあるのですが、そもそもの移動の自由を保障する視点(似た概念に移動権といった分野があります)に立って研究を進めようと研究の方向性を決めた論文でもありました。

山間部でのICTを活用したボランティア有償運送の導入プロセス(衛藤、2019)
住民がドライバーを担いながら運営するドアツードアの送迎サービスに、ICTを導入する際の要点を、技術利用上の課題に焦点化して論じたもの。
運営実態を紐解いていくと、公的資金に依らない利便性の高い送迎サービスの運営を実現しているものの、アプリやクレジットカードが使えないという利用者のニーズに対して電話対応や現金収受といった対応を組み合わせており、運営はITよりもむしろボランタリーな協力に支えられていることがわかりました。

研究の裏話
過疎地の足としてUberの国内導入が注目される中、スマホやクレジット決済、配車マッチングなど、現場でどのように機能しているのか、興味がありました。
ある意味で、修士からの情報化(ICT)ツールの社会実装というテーマをモビリティ研究として進めているこれまでの研究との接合的な位置づけになる論文です。

公共交通分野へのソーシャル・インパクト・ボンドの導入可能性(衛藤、2020)
公共交通分野において、先進的な取組の他地域展開を促すための政策的対応として、SIBの導入可能性を国内導入2事例から検討したもの。

研究の裏話
SIBは過疎地に対応した交通システムの実装をビジネスとして、B2Gのベンチャー事業として取り組もうと思っていたときに、注目したしくみです。交通分野で実践例はなかったのですが、導入可能性はあるのでは、とヘルスケア分野などで導入が始まっていた八王子市と神戸市の事例を聞き取り、せっかくなので論文化もしようとまとめたものです。

自分でやるにはなかなか手が足りないですが、要望のある地域で共助交通のしくみ(運営体制)の構築を持続的に進めていける事業モデルになるのでは、と思っています。

交通不便地域での高齢ドライバーおよび非免許保有者の移動実態(衛藤、2020)
亀岡市での調査に基づき、制度的空白の実態を示すとともに、ドアツードアの送迎サービスに対する利用意向を規定する要因を探りました。
結果より、免許保有の有無よりも、送迎を依頼できる同居家族の有無が意向を決定づけていることがわかりました。

研究の裏話
トヨタ財団の助成を受け、地域での共助交通の導入を目的に、事前調査として実態を把握しました。調査をふまえ、実証実験に向けて動き出しています。

京都新聞 丹波版(2021.3.29朝刊)
京都新聞  丹波版 (2021.5.10朝刊)

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第3部:ひとはく時代(2020年~)はどんな時代になるのでしょうか(自分のことながら)。
そして研究は続く。

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